カード。

「カード返して」
と診療終了後に弟が言いにきた。
「なんのカード？　クレジットカード？」
「歯医者の」
との返事。
はて？　歯医者とは？
ぐるぐる巡らせるも、ワタシが持っているのはクレジットカードなど、経理関係に関するもののみ。
以前、番号を確認するのに、日本歯科医師会の会員カードは借りた覚えがあるが、それは返したし、いつも財布の中に入っていたのを知っている。
月初め、小遣いを渡す時には、財布とこづかい帳、レシートを持参させることと決めているので、いつも見ている。
何をどう勘違いしての、ワタシが持っているに行き着いたのか？
「ないのなら、どこかで落としたのと違うのか」
とキツく問うも、不満気な表情で、こちらを睨むのみ。
ワタシを疑っていることは間違いがない。
そう言えば、STさんとの往復書簡では、診療所の予約表が紛失していたようだ。
どこにどうしまったのかは知らないが、いずれにしてもなかったとのこと。
なかったから、本人も診察日時を知らない。
診療所に確認してもらい、時間は判明したのだが、万事がその調子である。
これも自分自身が失くしたとは思っていないのであろう。
大事なものだからと、財布に入れたままにしておいた日本歯科医師会の会員証。
「そんなものどこで使う場面があるんだ？　大事なら、財布に入れずにどこかにしまっておけよ」
「財布なんかに入れておいたら、落とすに決まっとるやろ」
と締めたら、何を思ったのか、ゴソゴソと院長室の本棚の整理をしはじめた。

意味不明である。

とにかく記憶の混濁がひどい。
急に暑くなったせいであろうか？

パパに報告すると
「〇〇○”○なんだから、正常な判断はできないと思え。まともに相手するな」
との答え。
「期待するからダメなんだ」
とも。
いやいや、期待はもう捨てている。
しかし、説教垂れるってことは、期待しているってこととらしい。
確かに……。

それにしても今日も暑い。
今日は業者さんが来るってことで、弟んところを往復したワタシ。
肝心の業者さんが約束の時間に来なかったので「（ちょっと怒り気味に）帰ります」と連絡して、大量のシュレッダーゴミだけ回収して帰ってきたのだが。
自宅ではエレベーターの修理作業があり、蘭丸がガウガウうるさいとパパから連絡が入ってきたりしてて、気持ちのゆとりがゼロ。
いずれにしても、約束の時間は守ってほしい。

帰宅後、これを打ちながら、蘭フアと共に居間にいる。
蘭丸はエレベーターがピピピ、ピピピと音を立てるたびに、忙しなく動く。
ただし、ワタシが一緒にいれば、ガウガウすることを抑えられる。
ワンコも人も一緒なのかもしれない。